歯科臨床御法度/一覧

歯科臨床のインシデントレポート ピットフォール

2008年06月04日(Wed)▲ページの先頭へ
小帯の位置異常について
 小帯の位置異常は欠損補綴を行う場合からみても しばしば臨床上の障害となることがある
 下顎臼歯部欠損を床義歯あるいはブリッジにて補綴する際に大臼歯頬側歯肉に頬小帯が高い位置にあると床義歯の辺縁が接触しやすくなり 疼痛や褥瘡性潰瘍を生じる
またブリッジにおいても頬小帯が高い位置にあると食物の流れを妨げることになり 不潔域を広げ 歯周炎や二次カリエスを引き起こしやすくなる
 上唇小帯の短小による付着位置の高位は新生児期における母乳吸綴運動の妨げとなったり 混合歯列期において歯間離開などの歯列不正を引き起こすことは知られているが 上顎前歯のクラウンやブリッジに歯冠補綴の際にも歯間乳頭の退縮によって審美性を喪失する原因となる
 いずれも補綴作製に先だって 局所麻酔下に切り離して 延長あるいは移動させておくことが望ましい


2008年06月02日(Mon)▲ページの先頭へ
超音波スケーリング
 超音波スケーリングを行う際 スケーラーチップの特性を十分に理解しておくことが重要である 超音波振動子の機械の特性によりスケーリングチップが発熱するものとそうでないものとがあり また機械の設定によって発熱するモードとそうでないモードとがある 前者ではスケーリング中に口唇や歯肉にチップが接触すると火傷を負わせてしまう危険があり また咬耗により象牙質が露出している場合や歯肉退縮により歯根面が露出している場合では 歯面へのスケーリング操作において象牙細管に熱を伝導させてしまうおそれがある そうした場合歯髄充血による疼痛や知覚過敏症などを引き起こすことがある 使用に際しては注意が必要である  


手指を噛まれないために
 治療中に患者の閉口により手指を噛まれてしまうことがある 原因は色んな場面が考えられるが このようなことがないように普段から治療中に歯列上に指を置かないように注意を払うべきである 開口の保持が困難な場合には開口器やバイトブロック 開口器付き吸引装置の固定が有効であるが いずれも意思の疎通が容易で 治療そのものへの協力が十分である場合に限られる
 治療への協力が全く見込めない あるいは困難である場合には体動により脱落したり装着が不可能である そのような器具を使用する前に十分に人手を確保し 身体固定の手段を講じておかなくてはならない なおかつ迅速に処置が完結できるように準備を十分にしておくことも必要である
 顎関節の脱臼の徒手的整復術の際はガーゼを手指に巻いて あらかじめ噛まれることを前提に準備をする
 


2007年03月18日(Sun)▲ページの先頭へ
下顎のバンテージ包帯について
 下顎骨骨折観血的整復固定術後 下顎骨矢状分割法術後など下顎骨の外科後に術野の皮膚をバンテージ包帯で圧迫して腫脹や血腫の形成を抑えるが このときに必要以上に圧迫しないよう注意する 包帯使用中は回診時に必ず包帯の引っ張り強度をチェックして 同時に包帯の下部の皮膚の色調や体温を確認し うっ血や末梢の疎血 末梢感覚の喪失などの発現に注意する 出血や浸出液の防止にはペンローズドレーンや持続吸引ドレーンの留置を併用することが確実である 冷罨法で局所を冷却することも腫脹を抑えるとともに疼痛閾値を上げるために痛みが楽になる方法として推奨される
 顎関節脱臼時にも開口制限させるためにバンテージ包帯を行うが このときに開口制限をさせるために 引っ張り強度を上げると圧迫によるうっ血を起こして おとがい皮膚の知覚低下を引き起こすことがある 原因はおとがい孔付近の圧迫によるおとがい神経の損傷である おとがい孔付近の圧迫は避けるように包帯を巻くことで避けられる
 
 


2007年03月04日(Sun)▲ページの先頭へ
気管切開のケアについて
 口腔外科の病棟では気管切開後のケアを行うことも少なくない
気管カニューレのカフ付のものでは内部のエア圧力が高すぎると気道粘膜のうっ血や損傷を起こす危険があるため 少なくとも日に2回はベッドサイドでエア圧の管理を実施し 気道粘膜の末梢循環を確保すべきである 異常は出血や感染の有無や喀痰量の増減を確認する
 カニューレの周囲は清潔を保ち 喀痰や唾液などで汚染した場合には放置せずに消毒をしてガーゼを替えておく 消毒の際には丸綿球や角コットンは切開部分に落とし込まむ恐れがあるので使用しない 角ガーゼか止血鉗子に巻ガーゼで消毒液を浸漬して固く絞ったものを使用するとよい 切開部分を閉鎖しないように注意する
 カニューレを固定するガーゼは体動や体位変換などの際に迷入したり 塞いだりしないようにサイズや形状は適切にし ガーゼの繊維クズが断端からはみ出したりしないように処理する 


2006年11月01日(Wed)▲ページの先頭へ
上顎臼歯部の抜歯と上顎洞
上顎臼歯部の抜歯に際しては 上顎洞底との距離を あらかじめパノラマやデンタルなどで確認をしておくことが必要である 
 特に歯根尖端と上顎洞が交通しているケースでは ヘーベルの力の方向により上顎洞内へ迷入させてしまう危険があるため注意する
 残根といえども歯槽骨との癒着がある場合にはあらかじめエアータービンで歯根を分割してフリーにし ヘーベルによる脱臼を行って抜歯する
 万が一 迷入させた場合には抜歯した歯槽骨内をバーで削合して穿孔を拡大して上顎洞底との交通を広げる このときの形成する穴の大きさは迷入させた歯根の1.5倍くらいとすると良い それから生理的食塩水などで洗浄して洗い出すと 流れ出てくる
その後 感染を起こさないように縫合して閉鎖するか テルプラグなどの填入剤を入れるかし 数日間の鼻かみを禁止しておくと良い


2006年08月20日(Sun)▲ページの先頭へ
サホライド
 サホライドはカリエス進行阻止や象牙質知覚過敏症の薬液として広く使用されているが その効果については恒久的なものではないこと カリエスについては特に歯牙の変色について事前に説明をしておくこと 特に小児では保護者に事前にそのことをしっかり伝えてから実施すること 
 また説明の際には通常の予防歯科で使用されているフッ化ナトリウムと混同されるおそれがあるので フッ素とは区別して理解して頂く努力も必要である 
 号泣する小児を前にするととかく説明を省いて迅速に事を進めたいものであるが まず保護者に治療への理解と協力を求め 術者との良好な協力関係を築くところからスタートすることが後々の良い結果につながる
 サイホライドを迅速に奏効させるには塗布する部位の防湿を行い 塗布してから光照射を数秒実施する その後ただちに含嗽させても効果に差がない
 サホライドの使用はカリエス進行阻止の他にも 厳密な審美的要求がされない部位(すなわち臼歯部)の生活歯の生PZ後や生KP後 レストシート形成後などの知覚過敏の予防にも有効である ただしこれも支台歯の黒変について理解を得ておくことが望ましい したがって審美的要求の高い歯冠補綴には使用しない方がよい
 薬液の取り扱いについて治療する部位に限定して塗布するようにし けして皮膚や衣服に落とすことのないよう注意する 万が一サホライドが皮膚や衣服に付着した場合には直ちに現像液シミ抜き剤を塗布して漂白し ハイポアルコールなどで拭き取るとよい


2006年05月19日(Fri)▲ページの先頭へ
子供の泣き声に耳を澄ませる
 小児において泣く子に遭遇することは日常茶飯事だが 子供の泣き声を聞き分けることも事故防止のうえで重要な指標になる 
 治療に対する恐怖 疼痛の訴え 強い拒否の意思表示などは誰もが容易に指摘するところであるが それだけの先入観でとらえていると窒息や意識喪失などの重大な兆候を見落とすことになる
@号泣(ワアッーと声を上げて泣き 激しく体動する)
 痛みで泣いているのか 恐怖で泣いているのか 治療を進めながら区別すること 治療に際しては抑制が必要であるが 抑制の器具や方法によっては患児に危害を与える恐れもあるので 抑制帯やバスタオルの使い方を日頃から習得しておくことが必要
 抑制実施に際し 号泣している声音に注意し 咽頭の舌根沈下 意識喪失 嘔吐などに十分注意すること 
A涕泣(シクシクと泣いているが 体動せず 開口している)
 恐怖心いっぱいの状態である 優しく声をかけて患児の不安を取り除き 心身の鎮静と安定に努める しゃくり上げている場合には咽頭への器具 材料などが誤嚥されないように注意する
B傾眠
 局所麻酔後に子供がウトウトと眠たがることがある 泣いていた子供が治療が始まると途端に静かになり 眠り出すことは経験することが多い このときに確認をすることなしに患児は眠っているものと思い そのまま何もせず治療を進めていくと意識障害を見落とすことがある 眠っている子供は一度起こしてみて反応を確かめるのが必要である 「寝た子を起こすな」ではなく「寝ている子は一度起こしてみよ」である
 キシロカインなどの局所麻酔剤が子供には弱いながらも中枢神経抑制に働くため それ自体が眠気を催すこともある また治療前の極度の緊張から交感神経優位になると自己防衛機能が働いて副交感神経が刺激され眠気を催す また緊張からやや解放されると安心感から眠気を催すと主張する研究もある 
 小児歯科外来ではラバーダム装着 持続吸引機などを装着することがあるため 咽頭への異物落下や気道閉塞の兆候を見落とす危険があることを知らなくてはならない 
 また痛みの原因が治療している行為そのものによるものではなく 抑制帯や人手が抑制している手足を強く刺激していないかどうかや 開口器 バイトブロックなど歯科器具類が舌や口唇への圧迫をしていないかどうかも確かめる


2006年05月05日(Fri)▲ページの先頭へ
FCの使用について
 FCは既に感染して化膿性炎症を起こしている根管内には使用しない
 抜髄した後の根管内の残存する有機物を変性して固定させ 防腐を目的として使用するものである その作用は主としてホルマリンである
 もし感染根管処置に使用すると根尖から漏洩したFCが周囲組織の変性を起こして組織が固定され 排膿路が閉鎖するために排膿が困難となり かえって炎症が拡大して増悪させる結果となる 
 近年アルデヒドの発癌性が問題となっているため 使用を控える方向にある


2006年05月02日(Tue)▲ページの先頭へ
器具の受け渡し
 歯科器具の受け渡しはいかなる場合においても 絶対に患者の身体の上に置かない 上を通さない 水平位診療であるため患者の身体の上での器具の受け渡しは厳禁する  特に探針やデンタルピンセット エキスカ エバンスナイフ メス 針などの鋭利な器具 アルコールランプやトーチなど火炎を使う器具 溶解したワックスなどは 誤って落下することが患者の身体の安全にかかわる
 またFCや次亜塩素酸ナトリウム(ネオクリーナー) サフォライドなどの薬品や薬品のついた綿球なども身体の上は通さない


2006年04月30日(Sun)▲ページの先頭へ
口内炎について
 口内炎は様々な病態を反映する重要な臨床所見であることもある
 悪性腫瘍との鑑別にもっとも注意を払うべきで 歯肉 舌 口唇 口蓋 頬粘膜などの潰瘍には辺縁と健康組織との境界 硬結 可動性 出血の有無 疼痛の有無 症状や大きさ 色調の変化に注意する 深く突っ込んだ問診がもっとも重要である
 病原体感染で口内炎を発生するものとして 小児では麻疹や手足口病 溶血性連鎖球菌感染などがある 成人でもヘルペス 疱疹 伝染性単核症 コクサッキー パラミクソ HIVなどウィルスによるもの 梅毒や結核などの細菌によるものがある 感染症の場合には 口内炎用ステロイド軟膏剤(ケナログ アフタゾロン デキサルチンなど)は使用禁忌である またこれらステロイド軟膏は悪性腫瘍に対しても局所の細胞免疫の抑制に作用することを考慮すると使用を控える方が望ましいと考える 粘膜保護作用を目的として局所に軟膏を使用したい場合にはアズレン軟膏が適する アズレンはカモミール由来の消炎作用と粘膜保護作用のある青色の薬物である

 以下に記す口内炎については適切な使用と監督の下に口内炎用軟膏を使用し 安易に長期間使用しないよう指導することも必要である またこれらの軟膏の基剤には 口腔粘膜の保護作用があることと 唾液に対して不溶性である性質がある したがって食事摂取中も薬剤が容易に剥がれないため 食事後の使用よりも食前に塗布することで 食事中の疼痛を和らげる効果が期待できる
 咬合性外傷や外傷性咬合 不適切な歯科補綴治療 咀嚼習慣 悪習癖によって頻回に口の粘膜が損傷を受ける場合には 原因を除去すれば 速やかに回復する 特に義歯の不適合や矯正装置の粘膜損傷は 担当した歯科医師の技量に不信を招くことにつながるので 速やかに対応することが望まれる
 ヘビースモーカーや刺激物の嗜好品の摂取 悪習癖で引き起こされたものでは 患者自身への健康生活の重要性に気づきを与える いわば啓蒙として指導を行うとともに 禁煙や適切な嗜好品への転換を促すことも必要である
 口内炎の原因として見落としがちなものにアレルギー症状がある 経口摂取した食品や薬物のほか 化粧品や歯磨剤 石鹸に洗剤などが 口呼吸の習慣がある場合にはハウスダストや花粉を吸入することなどによって 口腔粘膜に接触するとアレルギー反応によって潰瘍や水疱を形成し 口内炎にいたるものがある リンパ球の検査やパッチテストで判明するが 主成分の他にも添加物などにも注意が必要である


2006年04月16日(Sun)▲ページの先頭へ
有病者の局所麻酔
 有病者に限らず 浸潤麻酔は無痛的に行うよう配慮と工夫が必要である
@笑顔や優しさ 会話による安心感を与えること
A麻酔部分に表面麻酔を塗布し 圧迫しておくこと 
Bあらかじめカートリッジを温めておくこと 
C注射針を32Gくらいの極細のものを使用すること 
D針の刺入する場所(刺入点)は口腔内の痛覚受容器の少ない場所から行うこと 
E深呼吸をして落ち着かせ呼気に入ってから針を刺入すること 
F麻酔注入時の速度は出来るだけゆっくりと行うこと
G「痛くないですか?」と声をかけること
H麻酔中の貧血の目安として 軟口蓋の色調の変化に注意する

 基礎疾患のある患者でも外来通院可能で 身体活動に制限がないコントロール良好な状態であれば 2%キシロカインカートリッジ1本の量であれば問題はない
 入院加療中や在宅療養管理中 身体活動に制限のある場合やコントロール不良の場合ではあらかじめ医科主治医のコンサルテーションを行ってから麻酔を使用する治療に着手する 
 歯が動揺しているとか 重度のカリエスで抜髄するなど やむを得ず麻酔を使用する際にはノルアドレナリンの添加されていないシタネストかスキャンドネストを使用すると良い 止血と鎮痛に対する効果を考慮すると むしろキシロカインカートリッジ1.6ccまでを使用する方が安全であるとする考えもある 
 筆者はむしろ後者の考え方を支持しているが 麻酔による合併症や事故の多くは内因性カテコールアミンの増加によるものが多い 特に麻酔刺入時に内因性カテコールアミンが血液中に増えるため 筆者はこれを防ぐために鎮痛効果に不安がある場合には麻酔当初は血管収縮薬を含まないスキャンドネストカートリッジを使用して麻酔範囲を確保しておき ついで局所の止血効果を得るためにオーラ注1.0mlカートリッジを使用している 


2006年04月14日(Fri)▲ページの先頭へ
小児の口腔外傷について
 事前に電話で問い合わせがあれば歯牙の脱落がある場合には 歯牙の保管方法について指示をしておく 
 外傷診察の優先順位は@全身 A顔面 B口腔 C咽頭 D咬合である
 問診の聴取が可能であれば 受傷時間や状況 場所などについて出来るだけ情報を集めておく 初診時の顔貌写真を撮影しておく 
 診断や治療にとっても大事な根拠となることは言うまでもないが 刑事事件や交通事故 民事賠償 保険金支払いなどの法的根拠とされる大切な項目である 処置が先に優先されることもあるが 少なくとも処置後でもよいので その場で聴取できることは記録に残して置かなくてはならない また受診者が未成年者の場合には家族 保護者への連絡がついているか確認が必要である 
 また後述する全身や顔面の症状によってはCTスキャンによる緊急検査と脳神経外科 眼科 耳鼻咽喉科 形成外科との連携が必要である
@全身
 まず意識障害 バイタルサイン 呼吸の状態について確認し ついで体幹や四肢 頭部に受傷していないか 嘔吐をしていないか 出血や打撲の有無 歩き方や表情 泣き方などから形や動きの異常を捉える 頭部の受傷は時として緊急を要する場合もある 特に新生児や2歳未満の乳幼児ではわずか数十センチの落下による頭部の強打でも頭蓋内出血を起こすこともある
A顔面
 ついで顔面に受傷を探る すぐに口腔へと目が行きがちだが 特に眼球や鼻など中顔面の受傷は口腔を診る前にチェック 開眼や動眼に問題がないかどうか 視力や視界についてはどうか 鼻出血については拍動性か持続性かなどに注意する

B口腔
 口腔内ではまず歯牙の脱臼や動揺 歯列の偏位 口唇や歯肉 舌や頬粘膜の裂傷 出血 異物や汚染物の存在 咬合の異常の有無を調べる 受傷した部位とは反対側や対合歯についても 必ずチェック

C咽頭
 意識障害がなく気道確保が問題なければ 咽頭に脱臼歯牙や汚物 異物の迷入や穿孔がないかどうかについても診ておく 必要があれば救急病院へ紹介しCTスキャンによる精査を依頼する 割り箸が口蓋咽頭より脳頭蓋底に穿孔して死亡に至ったケースがある   
D咬合
 咬合偏位がなくても骨折している場合がある 特に小児では若木骨折(グリーンスティックフラクチャー)といって不完全な骨折がみられることもある 両手で臼歯部歯列を左右に開いてみたり 舌圧子やデンタルピンセットの背中 割り箸などを噛ませて こじてみると痛みを訴える場合は骨折の可能性がある

 処置前には十分洗浄する このとき受傷後数時間内の新鮮創では洗浄に使用するのは生理食塩水でなくても 水道水による十分な洗浄で良い 水道水と生理食塩水とで処置後の細菌感染の発生について 差が見られなかったというエビデンスがある つまり洗浄水よりも術野の汚染物の除去が大事だと言うこと
 処置後は感染予防のために普通は抗生剤と消炎剤を投与するが 受傷した場所が屋外の土壌や草木などがある自然環境の下では破傷風に対しても考慮に入れなくてはならない 予防のため最寄りの医科で破傷風トキソイドの接種を依頼することも必要である


2006年04月13日(Thu)▲ページの先頭へ
抗生剤の予防投薬について
 歯科治療前もしくは口腔外科手術前に細菌感染を予防するために 抗生剤を事前に投与することが必要なケースがある
@臓器移植
 心臓 肺 膵臓 小腸 大腸 肝臓 腎臓などの臓器移植を受けている場合には免疫抑制剤を投与されているため易感染性である
A人工臓器
 心臓血管外科
  人工心臓弁移植置換術
 整形外科
  人工関節骨頭置換術
 循環器科
  心臓カテーテル検査後 ステント留置中
B感染性心内膜炎既往
C先天性心疾患
 待機的シャントと導管を含む未修復あるいは不完全修復
 修復処置から6ヶ月以内に手術またはカテーテル挿入法により留置した人工材料 人工装置により修復されている
 修復されて人工パッチ 人工装置の留置部位または近接する部位に異常が残存する
D免疫不全 臓器不全
 肝硬変 悪性腫瘍 全身ステロイド投与 顆粒球減少症 悪性貧血 化学療法や放射線治療中の骨髄抑制などによる免疫低下 重症糖尿病 AIDSの場合
E人工透析中
 人工透析患者では抗生剤の予防投与は必須ではないが観血的処置の場合には腎代謝の薬剤を避け 通常投与量の半分量を投与する

推奨されている方法
 アモキシシリン(サワシリンなど) 成人では2g/kg 小児では50mg/kgを 処置前30〜60分前に経口投与して待機する 経口投与が不可能な患者さんではアンピシリン(ビクシリンなど) セファゾリン(セファメジンなど) セファトリアキソン(ロセフィンなど)を点滴もしくは静注 筋注で投与する
 経口投与が可能だがペニシリンに対するアレルギー既往の場合にはクリンダマイシン(ダラシン) アジスロマイシン(ジスロマック) クラリスロマイシン(クラリス クラリシッド)を使用する
 予防投与がなかった場合には処置後2時間以内に投与をすることも良い
 


2006年04月11日(Tue)▲ページの先頭へ
歯肉出血
 歯周炎による出血は出血そのものが自覚がないか ポケットプロービング時に出血する程度であるので歯周炎として対処してもよい もちろん長期のフォローは必要である
 初診時に患者自らが歯肉出血を主訴としている場合 基礎疾患に続発する歯肉出血もあるので注意する 
 まず歯周疾患について検査し歯科的対応をとるが 全顎にわたって自発的な出血が数日間も続くものは 歯科治療に着手する前に血液内科で全身検索を依頼して血液疾患の存在を除外しておく
 特に悪性貧血や急性骨髄性白血病については治療開始が遅れると致命的である 病状が進行している場合には免疫能の低下 発熱 悪寒 下肢痛など全身症状を伴っていることがあるので問診で発見されることもある 初診の問診は重要である
 血小板の減少で1万を下回るとブラッシングによる出血でも自然止血は困難となるため 歯ブラシの使用を中止し柄付きスポンジによる口腔ケアが有用である 
 筆者の経験では初診時に40歳代女性で智歯周囲炎から波及した頬部蜂巣炎で来院したため 白血球数と白血球像 CRPを調べるために血液検査をしたところ 全身に明らかな自覚症状はなかったが 急性骨髄性白血病の結果が出たため 即座に血液内科紹介となったケースがあった
 また基礎疾患ではないが 女性の内分泌の変化による歯肉炎に伴う歯肉出血がある エストラジオールは歯肉粘膜の細菌エンドトキシンに対する感受性を高めるため 内分泌量が増大すると 病原菌より放出されるエンドトキシンに反応して歯周組織内の血管拡張をきたし 容易に歯肉の出血を起こすと考えられている この場合は妊娠や月経との関連があるので症状の推移と女性の体調との変化に注意すれば 診断が容易である
 そのほか 歯肉出血の原因としては重症のワンサン口内炎などの細菌感染症 ヘルペス性歯肉口内炎や手足口病などの水疱性潰瘍 ビタミンBやビタミンC アミノ酸欠乏症などの栄養摂取不足や代謝異常 局所の循環障害 喫煙 外傷 化学薬品による化学熱傷 特異的な嗜好品の頻回にわたる摂取などが挙げられる


仮着と合着
 生活歯の仮着に歯髄を保護するためにユージノール系の仮着セメントを使用することがあるが 使用後は表面に亜鉛華ユージノールが残留する ユージノールはレジンの硬化反応を阻止する 
 合着に使用するレジン系セメントはユージノールで硬化が阻害される 知らないで使っていると合着後にセメントラインが剥離しやすいため 装着物が脱離してしまうので ユージノールを含有する仮着セメントとの組み合わせには注意が必要である このため仮着にはユージノールの含まれていない仮着セメントを使用すると良い
 このほかにもレジンセメントの硬化を阻害する原因になっているものでは 空気の接触 水やアルコールなどの残留 次亜塩素酸ナトリウムの存在などが挙げられる したがって十分な防湿と薬剤類の残留のないように注意する 


生活歯の歯冠形成
 生活歯の支台歯形成の際には十分に冷却を行いつつ削合する タービンからの注水量や方向 吸引管の吸引力や吸引チップを置く位置によっては 削合する表面に十分な冷却水が行き渡らず発熱する危険がある 生活歯髄への熱の影響は60℃を越えると不可逆的な傷害をもたらすという報告がある
 削合による熱の影響は歯髄充血や歯髄変性 歯髄壊死 象牙細管の熱傷 エナメル質や象牙質表面の微小クラックの発生を起こし 治療後の急性歯髄炎や象牙質知覚過敏症に至る 
 常に歯牙表面を削合する際には冷却に留意するとともに不十分な可能性があれば アシスタントにスリーウェイシリンジによる注水を並行して実施する
 生活歯の形成後にはフッ素塗布やイオン導入 接着レジンコーティング フッ化ジアミン銀塗布などの知覚過敏対策を講じておく 合着には低刺激性で辺縁微小漏洩の少ない4−META系のスーパーボンドが適している
 知覚過敏の発現の際には知覚過敏処置を繰り返し行い 症状の低減に努めてから合着すると合着後の不快症状が予防できる 
 対策として治療後の疼痛や不快感 象牙質知覚過敏などの可能性を説明し あらかじめ数回分程度の頓服を処方するなどの対応が望ましい


2006年04月10日(Mon)▲ページの先頭へ
神経麻痺
 突然 閉眼できない 顔の表情が変化した 口唇が歪む 口唇や眉毛を動かせないなどの症状が出た場合には顔面神経麻痺の疑いがある 顔面神経は運動神経である
 口唇がしびれる 歯肉の感覚がない 歯ごたえがないなどの場合には三叉神経麻痺の疑いがある 三叉神経は感覚神経である
 いずれも神経そのものや神経周囲の異常を疑い 検査診断と治療開始を迅速に行う 神経症状発現から48時間がゴールデンタイムである それを過ぎると神経麻痺は不可逆的である
 ビタミンB群 ATP製剤 ステロイド投与の他 温罨法 低周波治療 レーザー照射 高圧酸素療法 星状神経節ブロック 鍼灸療法などが報告されている
 また画像診断による原因の確定も必須である 脳神経外科 耳鼻咽喉科医との連携の元に悪性疾患の鑑別を急ぐことも忘れてはならない
 相談に来院した10歳男児の口唇のゆがみから 顔面神経麻痺を疑い脳神経外科に紹介したところ 悪性上顎洞腫瘍とわかったケースがある


2006年04月09日(Sun)▲ページの先頭へ
上顎洞炎
 上顎臼歯部に歯痛があるのにカリエスや歯周炎など歯科疾患の存在が否定される場合 あるいは原因不明の場合には上顎洞の疾患を疑う パノラマレントゲンで上顎洞の状態を確認する CTスキャンの検査を行うと診断は容易である
 上顎臼歯部歯根尖と上顎洞底との関係 上顎洞の境界線 鼻腔粘膜の肥厚や腫脹 上顎洞不透過陰影 左右上顎洞の不透過傾向差などに注意する
 上顎洞炎は口腔内の症状の他にも頭痛 頬部痛 鼻閉 膿様鼻汁排泄 後鼻漏 流涙眼痛 視力異常 聴力異常 耳鳴 内耳不快感などを伴うことがある
 上顎洞炎のうち上顎洞と歯科疾患との関連が明らかである場合には原因歯の抜歯と上顎洞洗浄により治癒させることが可能である


感染根管処置
 感染根管処置は経過不良となることが多い
 無菌的に処置を行ったとしても そのことを知らなければならない 治療の成功率は初回で60%程度 再発で5〜30%程度と見る調査がある
 その理由は細菌が侵入をして 化膿性炎症を起こしている根管内には既に壊死腐敗した組織や根管壁が存在したり 根管充填材料が溶解していたり変性していたり 根管そのものに肉眼やデンタルレントゲン写真では確認し得ない亀裂や穿孔を来してしまっている可能性が高いからである
 感染根管の再治療に際しては上記の現情を十分患者に説明し 理解を求めた上で治療に着手するべきである
 処置に際しては抗生剤を投与して局所の消炎と除菌をまず優先し 無菌化に成功してから経過を観察して病巣の自然治癒に導くとよい もちろん歯根尖まで緊密充填するなどの基本を行うことは言うまでもない 


切開について
 切開は解剖上の制約に十分注意する 特に血管や神経の走行に注意が必要である 
 歯肉への原則として歯槽頂に切開線を設定する そうでない場合にはできるだけ歯槽頂より数ミリ程度の範囲で離れないところでとどめなくてはならない 
 上顎下顎また頬側舌側ともに血管の走行は歯槽頂で最も疎となり それを越えて血液供給している毛細血管はまれである 原則に反して切開すると切開線で血流は絶たれ末梢組織(ここでは歯肉など)の壊死と術後の治癒不良 疼痛の原因となる
 下顎の臼後三角での切開に際しては舌神経や顔面静脈枝の走行に 下顎小臼歯の歯肉頬移行部での切開に際してはおとがい孔に 上顎中切歯においては切歯孔に 上顎大臼歯口蓋側歯肉については口蓋孔の位置にそれぞれ注意し それらの脈管神経を損傷しないようにする
 また 智歯抜歯の際に下顎骨外斜線への切開を入れる際には頬側に深く切り込みすぎると咬筋付着部を損傷して 抜歯後の開口障害が強く現れて治癒に日数を要する
 粘膜切開にはメス15番で縫合は丸針 3−0シルクか4−0ナイロンを使用する 皮膚切開ではメス11番で縫合は角針 5−0ナイロン以下の細いモノフィラメントの縫合糸を使用する


2006年04月02日(Sun)▲ページの先頭へ
抗生剤の投薬について
 歯科領域での抗生剤投与は 歯牙や歯周組織への細菌感染により生じた化膿性炎症に対する化学療法である
 第一選択としてはペニシリン系や広域セフェム系だが βラクタム系抗生剤のアレルギーを有する患者に対してはマクロライド系の投薬より開始する
 プラークに含まれる細菌はバイオフィルム形成能が高いので アジスロマイシンなどのようにバイオフィルム破壊作用のある15員環のマクロライドを単独投与 あるいは他の抗生剤と併用すると有効に強力な抗菌力を発揮する 以前に歯周病の治療にアジスロマイシンが推奨されたのはこのためである
 妊婦や乳幼児に対しては歯牙の変色を引き起こすためテトラサイクリン系 安全性が確立されていないためニューキノロン系 アミノグリコシド系の抗生剤は禁忌である
 腸管内の常在乳酸菌も殺菌されてしまうため下痢や軟便の副作用が最も多い 消化管において菌交代症や偽膜性腸炎を起こすことがあるので 多剤耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR エンテロノンRなど)を併用して投与するか ヨーグルトの摂取を推奨指導することが望ましい
 また腸管内常在菌によって生成されているビタミンK産生量も著しく減少するため血液凝固能の低下が引き起こされる可能性があり このため抗生剤を長期に投与する際には凝固能の異常に注意すること 既に血液凝固能異常のある患者やワーファリンを常用している患者では出血に十分に注意することが必要である
 抗生剤の副作用として最も多いものは下痢 腹部違和感 口内炎 胃酸過多など消化器系の副作用であり アレルギー反応としては発疹 発赤 掻痒感 結膜充血 咳 咽頭違和感 呼吸困難 意識障害など多彩にある
 点滴剤は血液中へ直接投与するために投与開始からの血液濃度の立ち上がりが早く 短時間で有効血液濃度に達するため効果発現が早いが 皮内テストや輸液点滴セットの準備が必要である 内服薬との使い分けはCRPを指標とするとよい 一般にはCRPが陰性化すると内服薬への変更が妥当だとされている
 ちなみに臨床的には例外もあるが 細菌感染症では発熱ついで白血球数増多 CRP陽性の順で検査値が変動し 治癒に向かう過程では解熱して白血球数が戻りCRPが陰性化すると覚えておくとよい


2006年03月21日(Tue)▲ページの先頭へ
消炎鎮痛剤
 妊婦 乳幼児 薬剤アレルギー既往歴のある患者 喘息患者などに対する消炎鎮痛剤の投与はアセトアミノフェンに限定する 
 NSAIDsによる消化管出血のリスクを考慮して 消化管潰瘍や出血の既往患者 抗凝固剤(ワーファリン パナルジン 低容量アスピリンなど)やステロイドの投与を受けている患者に対してもアセトアミノフェンの投与が望ましい 
 アセトアミノフェン(カロナール、アンヒバなど)は長期投与による薬剤性肝障害が注意喚起されているが 歯科領域での使用では短期間での投与が多いため 重篤な肝不全の場合を除いては問題とはならない 世界中の医薬安全性研究者の間で最も安心して服用できる薬品として挙げられているほどである
 他のNSAIDsでは心不全の治療中の患者に対する投薬は血圧の上昇やうっ血性心不全の悪化を招くことも理解しておかなくてはならない 心不全の既往のある人ではNSAIDsを内服すると 内服していない人に比べて10倍も心不全増悪で入院するリスクが高くなってしまうというエビデンスがある


2006年03月15日(Wed)▲ページの先頭へ
智歯抜歯について
 智歯の抜歯においては必ずレントゲンにて解剖学的位置を十分に把握をしておき 切開線の設定や骨削除の範囲と量 分割抜歯においては歯牙の分割方法について検討し 安全に配慮して 手術に伴う組織の損傷をできるだけ必要最小限とするように努める 
 インフォームドコンセントとしては術前に下記のことについて説明同意を得る
智歯の抜歯について術式 所要時間 術後に起こる症状 すなわち出血 腫脹 疼痛 開口障害 嚥下痛 皮下出血斑 三叉神経第三枝(下顎神経)および舌神経の支配領域の知覚異常の可能性 またそれらに対しては適切に対応することを説明し 症状が重くなるであろうことを示唆していたずらに恐怖心を与えることよりも いかなる状況であれ最善を尽くして良好に経過するよう努めることを約束して安心を与えることが肝要である 事前に説明と同意を得ておいたことを証する同意書の作成が望ましい
 水平埋伏智歯の抜歯の際には歯冠分割するが エアータービンによる分割操作において頬側より舌側にバーを向けることは舌側に走行する脈管や神経の損傷を起こす危険があるために慎重でなければならない マイセルマレットを用いて叩打分割する際も同様である 舌神経の損傷を防ぐには埋伏歯の舌側歯槽骨を破壊しないよう舌側歯肉のフラップを形成して粘膜剥離子で保護しておくとよい また縫合の際に舌側粘膜を深く拾わないようにする


2006年03月14日(Tue)▲ページの先頭へ
妊婦のレントゲン撮影
 女性の患者のレントゲン撮影に際しては 妊娠中ではないことを確認するなしに これを行ってはならない 必ず問診票をチェックあるいは本人から問診をしておく 欧米では最終月経を問診するところもある
 もちろん全てのケースで放射線防護のための鉛入りエプロンを装着して撮影するが やむなく妊婦あるいは妊娠している可能性のある婦人をレントゲン撮影する際には特にエプロンの装着を必ず実施する 
 放射線被曝に対する不安に対して 歯科用エックス線撮影による放射線量は国際線の成田〜ニューヨーク間の1フライトで浴びる自然放射線量の5000分の1であること またそれは線源から直接放射して測定している数値結果であり 実際には歯科用レントゲンは女性生殖器へ向けているわけではなく 顔に向けて放射されるものであり 同時に放射線防護のエプロンを装着していれば 女性生殖器への線量はほとんどゼロでありうることをなどを説明する


   


歯科医療従事者向けです


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カレンダ
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